難しい子育ての知恵袋

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【現役療育保育士が】知的障害についてまとめてみた

 

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を持っている私たちが、お子さんの困った行動に悩む親御さんへ向けて、行動課題の解決策を提供しています。

今回は、”知的ゆっくり” についてまとめていきます。

 

知的ゆっくりとは

 

知的発達症のことをSNSでは柔らかく知的ゆっくりと表現していることが多い印象です。

医学的用語では精神遅滞(MR)、最近のDSM-5では知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)(IDD)と表現されるようになりました。

DSM-5ってなに?と思った方は以前のブログをご覧ください。

 

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知的障害の定義

 

厚生労働省のデータベースにあった研究論文から抜粋して以下にまとめます。

参考文献:https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018037A-buntan2_0.pdf

 

知的障害(Intellectual Disability)の定義

知的障害とは 知的機能 (intellectual functioning)適 応 行 動 (adaptive behavior)の両方に明らかな制限(significant limitations) があり、それは日常の社会生活 の多くの場面や実用的スキルの範囲に及ぶ。

この障害は 22 歳以前から始まる

知的機能とは

知的機能(Intellectual Functioning)は、 知能(intelligence)と言い換えることもで きる。

学習(learning)、推論(reasoning)、問題解決(problem solving)などの一般的な精神能力のことである。

知的機能を測定する方法の一つに IQ テ ストがある。

一般的に、IQ テストのスコア で 70 前後あるいは、75 までが、知的機能に制限があることを意味している。

知的障害とは知能機能に制限があるということ。
知能機能に制限があるか確認する方法がIQテストで、70~75あたりがボーダーラインとなるようです。

ボーダーラインという言葉もSNSやネット上でよく見かけますよね。
知的ボーダーと表現されている時には、このあたりのことを表現されていると理解ができます。

参考資料:文部科学省 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿

https://www.mext.go.jp/content/1422303_08.pdf

学習や推論、問題解決能力については、小学校の学習に向け、幼児期から保育の中で取り入れていく場面になります。
年齢に合わせた集団生活の中で、その時期に獲得してほしい姿に対して困り感が生まれてくると考えられます。

適応行動とは

概念的スキル(Conceptual skills)

言語や読み書きの能力であり、お金、時間、 数の概 念 と 自発的 に 行 動 で き る (selfdirection)ことをさす。

社会的スキル(Social skills)

対人スキル、対人反応、社会的責任、自尊心, 騙されやすさ、素朴さ(例:心配しやすい), 対人問題の解決, ルールに従う能力/法を 守り、被害にあうことを避けるなどの能力 をさす。

実際的スキル(practical skills)

日常生活能力(身辺自立能力)、職業能力、 健康管理、旅行/移動、スケジュールや習慣 に従う、お金の使用、電話の使用などのスキルである。

保育園などの集団生活の場では、適応行動の苦手さに気づかれる場面が多いと感じます。

特に幼児期における身辺自立では「トイレ」「食具」「着脱」などの苦手さが目につき、気になる姿として捉えられることがあります。

保育士が見ているPOINTをまとめたブログもあるので、よかったらご覧ください。

 

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知的障害の程度

 

知的障害の程度は、軽度・中度・重度・最重度の4つに分けられます。

軽度知的障害

軽度知的発達障害は発達期に生じ、知的 機能と適応行動が有意に低い状態である。

それは適切に標準化された個別のテストに より測定されるか、テストが不可能なとき は相応の行動指標によって判断される。

平 均水準より2から3標準偏差低い(およそ、 0.1 – 2.3 パーセンタイル)。

複雑な言語獲得 や理解と学習の達成に困難があることが多 いが、ほとんどの人は基本的な身辺自立や 家事、実生活に必要な能力を獲得する。

比較 的自立した生活と仕事をすることができる が適切なサポートが必要になることがある。

中度知的障害

中度知的発達障害は発達期に生じ、知的 機能と適応行動が平均より有意に低い状態 である。

それは適切に標準化された個別の テストにより測定されるか、テストが不可 能なときは相応の行動指標によって判断さ れる。

平均水準より 3 から 4 標準偏差低い (およそ、0.003 – 0.1 パーセンタイル)。

言語と学習能力の達成度は多様だが、基本的 なスキルに限定されることが一般的である。

基本的な身辺自立や家事、実生活に必要な 能力を獲得する人もいるが、ほとんどの人 は自立した生活をおくり成人期に仕事を得 るためにはかなりの程度の継続したサポー トが必要になる。

重度知的障害

重度知的発達障害は発達期に生じ、知的 機能と適応行動が平均より有意に低い状態 である。

それは適切に標準化された個別の テストにより測定されるか、テストが不可 能なときは相応の行動指標によって判断さ れる。

平均水準より 4 標準偏差以上低い(お よそ、0.003 パーセンタイルより低い)。言 語と学習能力の達成は極めて限定される。

運動能力にも困難があることが多く、適切 にケアされるためには支援者がいる環境で 日常的にサポートが必要になることが一般 的である。

集中的なトレーニングよって基 本的な自立能力をもつこともある。

基本 的な身辺自立や家事、実生活に必要な能力 を獲得する人もいるが、ほとんどの人は自 立した生活をおくり成人期に仕事を得るた めにはかなりの程度の継続したサポートが 必要になる。最重度との違いは適応行動の 違いにのみ基づく。

現存の知能テストでは 0.003 パーセンタイル以下の知的機能の差 を信頼性と妥当性を担保して測定すること ができないからである。

最重度知的障害

最重度知的障害は発達期に生じ、知的機 能と適応行動が平均より有意に低い状態で ある。

それは適切に標準化された個別のテ ストにより測定されるか、テストが不可能 なときは相応の行動指標によって判断され る。

平均水準より 4 標準偏差以上低い(お よそ、0.003 パーセンタイルより低い)。コ ミュニケーション能力は極めて限定され、 学習スキルを獲得する能力は基本的な具体 的スキルに限定される。

運動機能障害や感 覚障害を合併することが多く、適切にケア されるためには支援者がいる環境で日常的 にサポートが必要になることが一般的であ る。

重度と最重度との違いは適応行動の違 いにのみ基づく。

現存の知能テストでは 0.003 パーセンタイル以下の知的機能の差 を信頼性と妥当性を担保して測定すること ができないからである。

さいごに

 

知的障害そのものには現在治療法はありません。
ですが、発達しないということではありません。

その子成長に合わせ、療育を行ったり、環境を整えることで一つずつできることを増やすことができます。

また、知的障害には自閉スペクトラム症ADHDと併存することがあります。
どこから、どういった行動がと分けることは非常に難しいことではありますが、その子に伝わりやすい声かけ、環境を整えることが大切だと感じます。

 

www.e-healthnet.mhlw.go.jp